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『貴様っ!?』
もう一人の甲冑男はそれを見て、身構えました。
身構えたといっても若干体制を低くして、盾を少し前に出しただけ。
どうやら、魔術師の持つ球を警戒している模様です。
そんな“騎士”の様子を見た魔術師はニヤニヤとほくそ笑み始めます。
余裕の笑み、勝利の笑み。
そんな顔のまま、口を開きました。
『愚かりし騎士よ。私たちの戦いはここで幕を閉じるとしよう。では、さらばだ』
魔術師が再び笑うと、晴天だった空に暗雲が立ち込めてきます。
それは今までに見たことのないほどの雲量。
流石の騎士の顔も青ざめていきます。
しばらくの静寂の後、魔術師は球を持った手をいまや雲にまみれた大空へとかかげました。
大空はそれに呼応するかのように、その一点に雲を集め、何かを待ちます。
騎士にはその先が見えたようでした。
彼は右手に持つ剣を構え、振り上げます。
狙いはもちろん、目の前にいる魔術師。
ですが、遅かったようです。
騎士の放った上からの斬撃は空をきり、地面に突き刺さりました。
騎士はわけもわからぬまま、目だけを右へ左へと移動させます。
けれど、魔術師は見つかりません。
それもそのはず、魔術師は天から騎士の慌てる様を見下していたのですから。
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