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彼女はそこまで読み終えると、分厚い今まで音読していた本を閉じ、笑顔をつくった。
「と、ここまでが私たちの国の歴史です。皆、静かに聞けて偉かったですよー」
彼女の笑顔の先にいる十数人の子供達は、彼女と同じように分厚い本、『我が国の歴史~改訂版~』を閉じた。
その顔々には満足げな表情がうかがえ、中には目をキラキラさせている子もいるので、教えているはずの彼女も自然と笑みが漏れてくる。
(あぁ、幸せかな、この瞬間。
これが生きているということなのだろう。
うふふのふ)
そんなことを考えていた。
「えぇー!もう終わりー?もっと読んでよぉ!それからどうなかったのー?」
彼女が感傷に浸っていると、生徒達の中から声が上がった。
発言した子は皆のリーダーとして慕われていて、周りの意見をこうやって発言する存在となっている。
つまりはこの子の意見は皆の意見。
そんな子の言葉を聞いた彼女は胸に手を当て、再び感傷に浸った。
(そうか、そうか。
皆、もっと聞きたいのだね?
私は嬉しいよ。
こうやって子供達の無邪気な笑顔をこの目におさめるだけで幸せなのに、そこまで喜んでくれるなんて。
うん、癒される。
でも)
人差し指を左右に振る。
「だぁーめ。今日はここまでですよ。続きは明日でいきましょう」
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