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「えぇー」
不満そうにうなる子供達もかわいいので、彼女の顔は終止緩みっぱなしだ。
(うん。
やっぱり正解だ。
ここに来て正解だった。
あんなむさ苦しいとこに行かなくて正しかった)
こうやって教卓の上に立つ彼女だが、本職は教師ではない。
これは一種のボランティア。
何故か子供達や地本の人達からの支持が厚い彼女は、いろんなところで歓迎される。
それを利用して、子供大好きな彼女はこうして教鞭をとるのだ。
だが、やはり本職も全うしなければならないのが、責務。
もうしばらくここにいれば、その迎えが来てしまうだろう。
それまで、至福の一時をこうして味わっておこうと、そう思っていた。
「アヤカ先生ー!お願いぃー」
「あと一ページ!」
「眠れないよぉ」
子供達のリクエストは尽きない。
おかげで信念ゆるゆるな彼女はさっき自分が言ったことを簡単に捩曲げそうだ。
いや、捩曲げた。
「しかたないですね。あと、一ページだけですよ?」
「やったー」
暖かな日差しの差し込む午前の一時。
彼女はそれを満喫するため、再び分厚い本を開いた。
そして、それに目を落とす……が。
楽しい時間はいつでも誰かの手によって、あるいは時間によって壊されてしまうものなのである。
彼女の場合は前者であり、その足音は確かに彼女の耳に届いていた。
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