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水の中を悠々泳ぐ金魚のように
水に浮く浮き草のように
水に映る月のように
一つ
をした。
玉のような気泡が月を閉じ込めて唇から零れる。
水面にたどり着くといとも簡単に弾けて消えた。
『なに……る……りょう…』
その水面から声が聞こえる。
弾ける音に混じって聞き取れないがしきりに同じ言葉を繰り返す。
あぁ私の名を呼んでいるのか。
『ちょう…う』
私の名前は
『…う……』
消えてしまう
『…………』
(との)
(と の )
あの人へ呟く度に気泡が水面へ消えていく
苦しい
「張遼!」
細い腕が私を、私を包んでいた水から引っ張り出した。
空気が体に戻って
苦しくなくなって
今は私の名前がはっきりと聞こえた。
「張遼!何をしておるのだ!」
咳き込む私の背をなぜる。
「 と の」
「それこんなに冷えておるではないか」
「水、が」
「…?」
「泡が、綺麗だったのです」
貴方に見えて
.
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