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『――――高校生の時からそんなことじゃ、社会に出たあと苦労するのは自分よ?あたしはそれをあんたに分かって欲し…………ちょっと。話聞いてんのかしら松宮』
『立花里子よりこの人は脚線美だと言えるか?いやしかし…………論点を変えよう、ふくらはぎの張り具合は――――ぶつぶつ』
頭を抱えていた柳瀬が向き直してそう言った時、恭一は小声で独り言を呟きながら柳瀬の脚を凝視していた。
『…………このエロガキが』
『違う――――リコピンを引き合いに出したのが間違いだった。この人は一般人なんだ、一般人として客観的に見た場合を考えなければ意味がない』
顎をスリスリと触りながら柳瀬の脚を凝視する恭一の目は、十代男子にありがちな紫色に染まったものではなく、古美術商が掘り出し物を品定めするような――――そんなプロとしての眼光、そして鋭さがあった。
『今年四月――――この人が俺の担任になるまで全然気付かなかった。同じ学校内、こんな身近に俺が何年も追い求めていた国宝級の美脚、それを持った人間がいたなんて。灯台下暗しとはまさしくこのこと』
なおもぶつぶつと小声で呟き続ける恭一。
そんなちょっと危ない恭一に対して柳瀬は机を叩いて言った。
『ちょっと松宮っ!あんた真面目にやる気あんのかしら!』
『え?ああ、やる気ですか?ありますけどね、少しは』
還ってきた松宮恭一。彼の目は先ほどまでの脚プロとしての眼光は消え、普通の高校二年生のものになった。
『いーや、全然ないでしょ?正直に言えばこの胸揉ませてやるわよ』
『本当にないです、では失礼して』
そう即答した恭一の手が光速で柳瀬のEカップに伸びた瞬間、それを上回る神速で恭一の頭にはハリセンが直撃した。
『甘いわ。あんたがあたしの胸を揉もうなんざ百年早いっての』
『じゃあ言わないでください。それ本当に痛いんですから』
柳瀬の背中――――白衣で隠されて普段は拝むことは出来ないが、そこには柳瀬お手製の『お仕置きハリセン』が装備されていることは今鶴高校に登校・通勤する全員が周知の事。
『既成事実が欲しかったのよ、あんたやる気ないって言ったわね?』
『どういうことです』
『たった今あんたは来週から放課後、二時間補習授業を受けることが決定したのよ』
『どういうことです!』
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