何も知らなくて

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さて、その花嫁が儀式へ出掛けた時、雅信はトイレとタバコと称してこっそり後をつけることにした。   暗い夜道を歩き、辿り着いたのは境内だった。 花嫁は数人の男たちに囲まれて境内に入っていった。 雅信は耳をすませた。 そして、悟った。                         次の朝。 雅信が病院に運ばれた。 夜道を喚きながら走り回り、足を滑らせて転んでしまったらしいのだ。 恐らく酔っ払って正気を失ったのではないかということだった。 だが、これだけでは終わらなかった。 その日儀式を受けた花嫁の夫が行方不明になったらしいのだ。 部屋にはメモが置かれてあって、『俺はもうあんたといられない』としか書かれておらず、荷物は置きっぱなしになっていた。 彼が行方不明になって捜索から半日後、旅館から西へ離れた林で自殺した後が見つかった。 雅信はこれを知って、まさかと思っていた。 泰光は理解できてなかった。
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