自殺と

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前崎の死には、誰も悲しまなかった。むしろ悲しみの的は和夫の方だった。 和夫は情状酌量の恩赦が与えられ、執行猶予が出たため、菜月の死のショックで寝たきり状態の母を介護する生活を送った。 生き残った子供たちは、前崎の妹・亜子が母親代わりになって育てることになった。   亜子「そうそう、兄さんの遺影はどうする?」 和夫「ないままでいい。これ以上、美咲や菜月や裕也を殺したあいつの顔は、もう見たくもないからな。」 亜子「ろくな思い出もないものね。休みの日はどうしたの?」 和夫「俺が免許取ってからみんなと出掛けたよ。けど、やっぱりバラバラだったな。菜月が免許取ってから、みんなバラバラに出掛けた。」   結局、みんなにとっての前崎は、死んで当然に過ぎなかった。
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