誰にも渡さない

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梨奈を見た光雄はぼーっとした。 「……お父さん、どーしたの?」 はっと我に返る父。 「あぁ、お前の母さんを思い出しただけだ。」   やがて、大学に通うために別居することになった梨奈。 光雄はいても経ってもいられなくなり、ある日いきなり外に出た。 有季がそれに気付く。 「兄さん、どーしたの?」 「気にするな。すぐ戻るさ。」   しばらく車を走らせていると、光雄の目に何かが移った。 梨奈だ。 よく見ると背の高い男と歩いている。 アレは梨奈の彼氏か? 光雄がそう思った直後、ある考えが脳裏をかすめた。   リナハダレニモワタサナイ。 ワタスモノカ。   光雄は梨奈があの男に奪われることを恐れた。
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