誰にも渡さない

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そこには1人の女性がベッドで倒れていた。 「大丈夫ですか?」 すると、女性が目を開けた。 意を決して太一は名を尋ねた。 「佐伯梨奈さんですね?」 「はい。あなたは?」 「僕は中川太一です。中川勇一の弟です。」 「勇一さんの…!」 「急いで逃げましょう。あなたのお父さんは兄を殺した男ですから!」 その時。 「おい、何勝手に入っているんだ?小僧。」 光雄の帰りが早かった。 太一が振り向くと、光雄の手には包丁が握られていた。 「梨奈、お父さんはお前を堕落させる輩から守っただけだよ?」 太一はすぐに梨奈の前に出て首を左右に振った。 「違う!お前は梨奈さんを孤独にしただけだ!」 「違わない!」 言うなり光雄は包丁を構えた。 「兄の仇!」 太一は包丁を避けると、隙をついて光雄の手から包丁をたたき落とし、そのまま包丁を取り上げた。 「な、何故だ…?」 「これでも剣道の有段者だからな。さて、警察へ行ってもらうぞ。」
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