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雨は、降り続いていた。
降ってくる雨と同じくらい冷たい都会の人々の感情は、濡れ続ける私の姿なんかで動かされることはない。いつもと変わらぬ街の中で、頭からつま先までじっとりと濡れた私の姿だけが浮き上がっていて、自分が幽霊になったような気分だった。
「お嬢さん、どうしたんですか?」
私の横で、突然若い男の人の声がした。唐突な声は、まるで私の胸の奥に直接響くようだった。激しい雨音にかき消されることもなく、私の凍えた身体にゆっくりと沁みていく。
「今日の雨は冷たいですよ。こんなに濡れてしまったら風邪を引いてしまいます」
再び聞こえた男性の声に、私はゆっくりと首をめぐらせた。
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