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 暗い部屋。  まだ日も高い時刻。外は輝く陽光に満たされているというのに、部屋の窓には光を遮る分厚いカーテンが引かれ、部屋の中央にある蛍光灯にも光は灯されていない。  そんな暗く静かな部屋に、少女が一人いた。  ブラシもかけていないぼさぼさの長い黒髪の少女が、膝を抱えて座っている。  眠っているのだろうか?  いや、彼女の瞳は開かれていた。しかしその目は何も映してはいない。ただその虚ろな視線を、部屋の中に漂わせているのみであった。  元は可愛らしいと言えたであろうその顔は、今はやつれ果てていて見る影も無い。 「……リョウ……」  少女が、喋った。いや、喋ったとはいえないかもしれない。ただ言葉が、音となって少女の唇から零れ落ちた。そんな感じだった。 「……リョウ……」  再び零れ落ちる、言葉の雫。  自分の発した声に耳を傾けるように、ゆっくりとまばたきをする少女。彼女の目は、部屋の中ではなくどこか別の世界を見つめていた。
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