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「よし! ここで間違いない!」  場違いな、明るい声。  同時に、窓のカーテンが引かれ、闇に満たされていた部屋に、光が満ちる。  少女が、けだるげにまぶたを上げた。  いつの間にか部屋の中にいた声の主――ミカエルは部屋の中の少女に気づかないまま手元の紙切れに目を落としている。 「ええっと、ターゲットの名前は確か……かみの、しんり? なんだか怪しげな宗教団体みたいな名前だな……」  素っ頓狂な声。それが少女のかたく閉ざされた心を、ゆっくりとほどいていく。  少女は半ば無意識に、傍らのバッグを手に取った。そのままそれを振りかぶり、突然の闖入者の頭に叩きつける。  バゴッ。  充分に勢いがついた中身たっぷりのバッグの一撃は、ミカエルの後頭部にジャストミートし、予想以上に鈍い音を響かせる。 「こうの、まりよ! 失礼なこと言わないで!」  少女が、ミカエルに向かって叫んだ。これほどの強い感情をあらわにしたのが、ほとんど一年振りであるということを、少女は気づいていただろうか。 「いててててて……最近、叩かれてばっかだな……」  予想以上のダメージを受けたミカエルは、思わずその場にうずくまる。目にはうっすら涙が光っている。 「っていうか、あんた誰なのよ!」  怒りにまかせて叫んだ少女――真理の言葉に、ミカエルはさっきの痛みはどこへやら、待ってましたとばかりに飛び上がった。 「オレは、ミカエル!」
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