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――ドクン。真理の心臓が、大きく波打った。
時が止まったかのように、真理はミカエルの顔から目を離せなくなる。
忘れもしない、胸が張り裂けるような懐かしさと暖かくて優しい切なさを同時に運んでくる、その顔。
ありえない。
そんなわけない。
けれど。真理は尋ねずにはいられなかった。
「リョウ? ……リョウなの?」
しぼり出した真理の声は、震えていた。意味不明な問いに、ミカエルは首をかしげた。
「え?」
ミカエルは急に様子が変わった真理を、わけがわからない、という表情で見つめていた。
「……」
真理は、なおも言葉をしぼり出そうとする。しかし、それは言葉にならなかった。
唇をかんで、想いを振り切るように、ミカエルの手を振りほどく。
「……そんなわけないわ。リョウは、リョウはもう……」
引き結んだ唇から、言葉が零れ落ちる。同時に一筋の涙が、頬を伝った。
「あ、あの……」
その背中に掛けられた、ミカエルの声。真理は耐えるように、唇をかみしめた。
これ以上、ここにはいられない。彼の近くにいると、崩れてしまいそうで。
「二度とあたしの前に現れないで」
必死の思いでそれだけ口にすると、真理は逃げるように部屋を出た。全ての思いを断ち切るように。
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