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「なんなんだ、いったい……」
一人残されたミカエルは、呆然としていた。突然の真理の変わりよう。全くわけが解らない。
しかしそれよりも、真理の発した一言が、彼の胸を波立たせた。
「リョウ……?」
その言葉は、喉に引っかかった魚の小骨のように、彼の胸の奥を引っ掻いていた。
何か大切な、暖かな感覚が浮かんでは消える。
それはまるで砂漠の蜃気楼のように、近づこうとすれば遠ざかり、焦点が定まらない。そうでありながら、それはまた確固たる存在感を持って彼の胸を圧迫するのである。
「……何か、大切なことを忘れている気がする」
天使の少年は、少女の部屋の中でひとり呟いた。
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