(3)

4/4
前へ
/58ページ
次へ
 不意に、ラファエルが尋ねた。ミカエルが驚いたように顔を上げる。 「え……?」 「何が正しくて、何が間違っているのか。そんなものは誰にもわかりません。どの道を選んでも、もしかしたらそれが間違っているのかもしれない、そんな不安を抱きながら、それでも人は決断しなければならない」  ひとつひとつ、かみしめるように言葉を区切りながら語るラファエルに、ミカエルは小さくうなずいた。 「ミカエル、あなたはどうしたいですか?」  ミカエルの瞳を真っ直ぐに見つめて尋ねるラファエル。ミカエルは、目をそらさなかった。 「オレは……あの子の傷を、やわらげてあげたい。どうすればそうできるのかはわからないけど。……でも、なんかほっとけないんだ」  ミカエルの答えに、ラファエルは満足そうに目を細めた。 「ならば行きなさい、ミカエル。これはあなたが決断しなければならないことです」 「オレが、決断しなきゃならないこと」  自分に言い聞かせるように、確かめるように繰り返す。ラファエルは彼を励ますように、ポンとその肩を叩いた。 「大丈夫、あなたならきっと彼女を救うことができます。いいえ、これはあなたにしかできないことなのです」  その言葉にミカエルは、ゆっくりと、しかし力強くうなずいた。そしてくるりと背を向けると、走り出した。振り返らずに、しっかりと前を見つめて。 
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加