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不意に、ラファエルが尋ねた。ミカエルが驚いたように顔を上げる。
「え……?」
「何が正しくて、何が間違っているのか。そんなものは誰にもわかりません。どの道を選んでも、もしかしたらそれが間違っているのかもしれない、そんな不安を抱きながら、それでも人は決断しなければならない」
ひとつひとつ、かみしめるように言葉を区切りながら語るラファエルに、ミカエルは小さくうなずいた。
「ミカエル、あなたはどうしたいですか?」
ミカエルの瞳を真っ直ぐに見つめて尋ねるラファエル。ミカエルは、目をそらさなかった。
「オレは……あの子の傷を、やわらげてあげたい。どうすればそうできるのかはわからないけど。……でも、なんかほっとけないんだ」
ミカエルの答えに、ラファエルは満足そうに目を細めた。
「ならば行きなさい、ミカエル。これはあなたが決断しなければならないことです」
「オレが、決断しなきゃならないこと」
自分に言い聞かせるように、確かめるように繰り返す。ラファエルは彼を励ますように、ポンとその肩を叩いた。
「大丈夫、あなたならきっと彼女を救うことができます。いいえ、これはあなたにしかできないことなのです」
その言葉にミカエルは、ゆっくりと、しかし力強くうなずいた。そしてくるりと背を向けると、走り出した。振り返らずに、しっかりと前を見つめて。
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