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 不意に、目の前の光景が崩れた。  強い風に吹き散らされる砂のように、景色がさらさらと流れて消えていく。  なぜか少し哀しげな微笑を浮かべているリョウの姿も。 「リョウ!」  真理は消えゆくリョウの姿をつなぎ止めるようにその両腕でリョウを抱きしめようとする。  彼女がつかんだのは虚しい空白だった。  意識が急に現実に引き戻される。  真理は、暗い部屋に一人で座っていた。  彼女が見ていたのは幻。  彼が隣にいたころの、幸せな、哀しい幻。  あの時は、リョウと離れることになるなんて思っても見なかった。  ずっと一緒にいられると思っていた。  ――離れても、オレのこと忘れんなよ?  頭の中を、リョウの残した言葉だけが駆け巡る。 「リョウ、……ねぇ、あたしどうすればいいのかわかんないよ!」  膝を抱えたまま、絞り出すように少女は呟いた。  暗い部屋の中、少女のすすり泣く声だけが、いつまでも響き続けた。
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