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それは、闇が人の姿を取ったものとでもいうべきであろうか。
闇と同じ色のスーツを身にまとったその人影は、しかし服の色のためではなく、その内側の雰囲気のために、闇の中に深く溶け込んでいた。
細身のスーツを見事に着こなした、引き締まった無駄のない体つき。黒い髪に黒い瞳。一方で、肌の色は透きとおるように白い。中性的な容貌は完璧なまでに整っており、誰もが美しいと認めるだろう。だが、それは同時に冷酷さを秘めた、どこか破滅的な美貌だった。
彼の名はメフィストフェレス。
光から生まれた天使たちとは対照的に、深い闇の中から生まれた存在。
彼の正体は、悪魔であった。
悪魔たちはそれぞれ特殊な能力をその身に宿し、深き闇の中で暗躍していた。
彼らの目的は、誰も知らない。もしかしたら、彼ら自身さえも。
メフィストフェレス、通称メフィストが司っているのは、人間の記憶であった。彼の役目は、絶望した人間の記憶を消すこと。
「……了解しました」
彼が、誰かに向けて深々と頭を垂れた。その顔に浮かぶ感情は、深い尊敬と、畏怖。
会話の相手は見あたらない。メフィストの前に広がるのは、果てしない闇。
メフィストは、最後にもう一度、闇に向かって一礼するとその身を翻し、闇に消えた。
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