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交差点の信号が、青に変わった。
少年が、横断歩道に足を踏み出した。
そこに、赤信号を無視して急加速したオートバイが迫った。
急ブレーキの音が、響いた。
すべてが映画のコマ送りのように、真理の眼前で進んでいく。
「リョウ!」
ふたたび、声にならない叫び。
だがそれは、すでに定められた運命を変えることはできなかった。
猛スピードで走っているはずのオートバイが、まるでスローモーションを見ているかのようにゆっくりと、少年に迫る。
気付いた少年がそれを避けようとするが、その動きも極めて緩慢なものだ。
少年がバイクを避けられない事は、誰の目にも明らかだった。
「!」
真理の視界が、紅く染まった。
遠のく彼女の意識の片隅で、耳障りな救急車のサイレンの音だけが、いつまでも響いていた――。
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