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「おや?」  不意にラファエルが、何かに気づいたようにその身をかがめた。その手が床に落ちていた紙切れのようなものを拾い上げる。 「これは……指令書? ミカエルが忘れて……」  小さく折りたたまれていたそれを、何気なく広げて眺めたラファエルの眉が突然ひそめられた。 「これは……!」  そのままその顔に険しい表情を貼り付けて、目だけが紙切れの文字を追う。  紙切れに書かれた文字を読み終わったラファエルは、心を落ち着けるようにしばし瞑目した。その表情は先ほどまでの穏やかなものとはうって変わって、その眉間には深い溝が刻まれている。  不意に、ラファエルがその顔を上げた。部屋の天井を通してさらにその上を見通すように、彼のエメラルドのような翠色の瞳が、頭上のただ一点を見つめる。 「……主よ、これはあなたが彼に与えた試練なのですか」  視線の先の、見えない存在に訴えかけるように、祈るように、ラファエルの薄い唇が言葉を奏でた。  それからゆっくりと目を閉じ、再び開かれた瞳は部屋の扉の向こう――ミカエルの出ていった方向を見据えていた。 「ミカエル。頑張るのですよ」
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