序章

2/4
前へ
/143ページ
次へ
―――――――――――――― 真っ白な世界 見渡す限りの"白"と"無" その世界に佇む一組の男と女――――― 女は涙していた 「 私には出来ないっ―――― もう二度と、"あんな事"は繰り返したくはないんです…… 」 心乱した声 震える手で自分の顔を覆い 頭を小刻みに振るう姿は、まるで自らの罪を振り払うかの様だ―――――― 「 彼は、君を恨んではいないよ。寧ろ"幸せ"とまで言っていた。 」 対照的に優し気な穏やかな声色が響き渡る その言葉に反応したのか女は泣き腫らした顔を上げて、男を見つめていた。 「 君が彼に"幸せ"を運んだんだよ。時にすれば、ほんの一時の事だったかもしれない…… それでも彼は満足だった…… 」 それでも充分じゃないかい?と言って微笑む姿は美しいもので 女の頬を伝う涙は何時の間にか止まっていたが 未だ、血が滲む程強く拳を握りしめていた 「 もし…… もし、私が行くとしても…… またっ 」 「 それでも君は、彼の側でいてあげなさい。彼らには、君が必要だから 」  
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1076人が本棚に入れています
本棚に追加