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真っ白な世界
見渡す限りの"白"と"無"
その世界に佇む一組の男と女―――――
女は涙していた
「 私には出来ないっ―――― もう二度と、"あんな事"は繰り返したくはないんです…… 」
心乱した声
震える手で自分の顔を覆い
頭を小刻みに振るう姿は、まるで自らの罪を振り払うかの様だ――――――
「 彼は、君を恨んではいないよ。寧ろ"幸せ"とまで言っていた。 」
対照的に優し気な穏やかな声色が響き渡る
その言葉に反応したのか女は泣き腫らした顔を上げて、男を見つめていた。
「 君が彼に"幸せ"を運んだんだよ。時にすれば、ほんの一時の事だったかもしれない…… それでも彼は満足だった…… 」
それでも充分じゃないかい?と言って微笑む姿は美しいもので
女の頬を伝う涙は何時の間にか止まっていたが
未だ、血が滲む程強く拳を握りしめていた
「 もし…… もし、私が行くとしても…… またっ 」
「 それでも君は、彼の側でいてあげなさい。彼らには、君が必要だから 」
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