序章

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 かき乱される心―――――― "あの日"、置き去りにしてしまった想いが疼(ウズ)き出す。 「 私が…… 私が居れば、少しでも笑ってくれますか?少しでも生きたいと…… 願ってくれますか? 」 今にも泣き出しそうな顔で、声で、微笑んでいた。 その笑みの裏側を、彼女の気持ちを理解していたのかもしれない。 男も又、優しい微笑みを浮かべて彼女を見つめていた。 「 ……大丈夫、君にならできるよ。 」 言葉が合図となったのか、辺りが白く輝いてゆく――――― 眩いばかりの光を放ち光は女を徐々に包み込こみ 僅かに霞みがかった視界が 意識が 段々と濃い霞みへと変わり、ボヤけてゆく そんな中、薄れゆくはっきりとしない世界で、何故か疑問に思った事があった。 「 貴方の…… 名前は? 」 聞かなければならない、と 男は少し驚いた様だが 最後に見たのは優しい微笑みを向けてくれている姿 「 ユエ―――――― 」 光は更に強さを増し続け 遂には、女の身体を呑み込んでしまう。 それと同時に 辛うじて持ち堪えていた意識をも 彼女は手放した―――――――――      
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