第一章 泣き面に蜂

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「王、直ちに捜索隊の結成を!」 「あ、あの婦人に居られては神経が幾つあってもたりません! 皆の平穏の為にも一刻も早い御決断をっ!」 テキーラ王を始めスピリッツ王国の政を取り仕切る家臣達は皆焦躁しきった様子だ。 大臣などあさっての方向を向きブツブツと鏡恐い鏡恐いを連呼している。 その挙動は阿片の末期患者の症状に酷似していた。 (皆も相当参ってる様だ、 このままでは治世に支障がでる 何より俺が限界だ 大臣は別にどうでも良いとして…… 各地で魔物もはびこっているし こうなっては仕方ない、 適当に報償でも与えて捨て駒にでもするか……) 何故か大臣への扱いが粗末なテキーラ王はいかにもだるそうに頭を掻くと濃い隈の出来た眼窩を今か今かと指示を待ち受ける家臣達に晒し命令を下す。 「はぁ…… 仕方ない、急いで捜索隊を編成させろ 但し、この事は内密にな 民に知られでもしたら事だ さぁ、我等が英雄を出迎えるとしよう くれぐれも粗相の無いようにな        ・・・ でなけりゃあの素敵なレディーを何時までも我等が独占してしまうだろう? そうなっては世の男達が不憫だからな」 その言葉で皆ほっと安堵の溜め息を付く。 心無しかほんの少し表情も明るい物に変わったいた。 かくしてスピリッツ王国を治める者達の心に仮初の平穏が訪れた。 今後の展開はどうなる事やら…… 因みに大臣だけは嬉しさの余り失神して失禁していた。 その情け無い姿に王は大臣の左遷を決意したとか――――
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