プロローグ

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紅蓮(ぐれん)に揺らめく陽炎、炎の龍は言葉にもその身の炎を宿すように熱く告げる。 「我は命あるモノに情熱と温もりを与えよう。 だが力の使い方を誤るな、その炎は時に全てを焼き払い、万物を灰とかす獄炎となろう」 天空に漂う碧眼(へきがん)の双眸(そうぼう)、風の龍は通り過ぎていく風のように涼しげに告げる。 「僕は命あるモノから生まれる息吹きや鼓動を伝える為、力を貸します。 ですが力の使い方を誤らないで。時に吹く強き風は万物を射抜き、切り刻む脅威になる」 蒼海(そうかい)に踊る静寂の波紋、水の龍は波紋のように広がりをもつその声ならざる声で告げる。 「私は命あるモノに潤いと恵みを与えましょう。だけど力の使い方を誤らないで。清き水は時に全てを打つ豪雨となり、重く押し流す濁流へとなるでしょう」 絶壁の如く胎動(たいどう)無き石神、土の龍は大地そのものを揺らすような響きをもって告げる。 「我は、命アるモノ達が安らぎスまう土地となり道となろう。 だが、気をつけよ、時としテそれハ儚く脆い、強固な鉱物ほド崩壊の威力ハ凄まじいものゾ」 漆黒に轟きし閃光、雷の龍は曇天に稲光する轟音(ごうおん)をもって告げる。 「我は命あるモノを動かし、轟音を響かせ人々を興奮に震えさせようぞ。 しかし、それは攻撃性あふれるものにありて…命を奪う引き金にも成りかねん」 存在は対を成すが、 常に寄り添い存在する“光の龍”と“闇の龍” 「私は命有るモノが歩む道を照らします。 希望の光というモノが私の管轄(かんかつ)かはわかりません。全てを無に帰す絶望の光も存在しますから」 「俺の存在意義も光と何ら変わりないだろう。俺は命有るモノが安心して体を休める時を刻む。 だけど何時の時代からか、人間は俺達を区別し、光は正義だ闇は悪だと変な考えを押し付ける」 ………。 これらの龍が世界を統べる。 だけど… それは、遥か昔の話し。
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