第一章

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再びガイクスを見る。やはり5年振りの故郷というのは緊張する。町並みは変わっているだろうか。道に迷わないだろうか。昔一緒に遊んでいた者達は自分を覚えているだろうか。そんなことを思い「ついに帰って来たんだな」と、サイラスは胸の鼓動を高鳴らせ、同時に緊張で押し潰されそうだ。 とりあえず心の準備でもしてから行くか、一服だ一服。と意気込みながら、背負っている荷物を丘に転ばせた。 「緊張なんて、俺らしいな」と一人つぶやきながら、転ばせた荷物に手を伸ばす。手先が慣れたようにファスナーを滑らせる。中には物を小分けに入れておくための袋が数個あり、そのうちの一つを取出して収納口の紐を解く。 中にはパンが入っているが、数日経っているのかパンは少し乾いている。サイラスはそれを少量取り出すと、休息も兼ねて食事を開始した。乾いたパンを飲み込むた水筒の水で小刻みに飲み下していった。 食事は基本的にパンで、穀物は嫌いだ。…食った次の日には腹痛が治まらない。 そのような感情を抱きながら、俺はパンを口に含んだ。いつものように幾度も幾度も噛んでは水で流し込む。 「やっぱり外で食べるパンは美味いな…」と、目の前のガイクスに足を運んだらもっと美味しい食べ物があるとわかっていても彼は残っているパンを食べきっていしまう。思わず顔がにやけた。 少量のパンは5分も待たずに完食。歩きながら食事を済ませてしまえばすでにガイクスに入国できていただろう。こういつまでも呑気にしちゃいられない。サイラスは立ち上がり、袋に残ったパン屑を草の上に捨てて、荷物を背負いなおすと外壁にぽつんと見える門に向って歩き始めた。 その後ろでは空で鳴いていた小鳥が地に舞い降り、落ちているパン屑をついばみ始める。 そろそろ入国検査を済ませて国に入らないといけない。日暮れにはまだ時間があるが、日が暮れてると外壁の門は閉ざされてしまうので野宿決定だ。 「さて…そろそろ行くか。せっかく明るいうちに来たから、早めに時間のかかる入国検査を終わらせておこうかな」
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