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陽光届かぬ、深い深い海の底。静かな藍色の世界に、ルナは生まれた。
父は海の王様。
母は海の王のお妃様。
三つ歳上の姉が一人。
厳しくも頼りがいのある父と、思慮深く美しい母と、ちょっとオマセな姉姫に囲まれ、平凡で幸せな日々を過ごしていた。
深海に淡く輝き豊かに波打つ藤色の髪。
凍てつく氷河の瞳。
柔らかな肌は真珠。
珊瑚の唇。
母譲りの美しい紫鱗(しりん)の尾。
ふくらみ始めた乳房は、詩に伝え聞く朝露に恥じらう薔薇の蕾(つぼみ)か。
その歌声は、晴れの海を渡る風のさざめき。
海の王国の二の姫ルナは十歳。健やかに美しく育った。この頃ではあと数年経れば王妃や姉姫と並び、美女と呼ばれる事だろうと城中でもっぱら噂されているようだ。
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