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「うぇっ…ぐすっ…ぐすん…」
女は俺のことなんか気にもとめずに、号泣した。
号泣しまくった。
さながら、迷子になった子供のようだ。
涙やら鼻水やらいろんなものを垂れ流しながら。
そして今、ようやく泣き止んだところ…。
しかし、泣き顔きったねぇな、この人。
鼻水くらいすすれよ。
見るに見かねて、黙ったままティッシュを箱ごと渡した。
「あぅ…ありがと…ずずっ」
ぐしゃぐしゃの顔のまま、女はそれを受け取る。
「…少しは落ち着きました?」
「うん、ごめんね、なんか…迷惑かけて」
鼻をかみながら、答える。
「何があったんですか?っていうか、あんた誰?」
ずっと訊きたかったことを思い切って訊ねると、女は慌てて言った。
「そうだよね、あなた何もしらないもんね。ごめん…。
私は、牧野彩子(まきのあやこ)。高橋の……彼女だったの」
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