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「私はね、私はね、これでも本気だったんだよ……うっ……うぇぇ…!!」
案の定、また泣き出した。
しばらく止まらないぞ、これ。
勘弁してくれ、高橋。
帰ってこい、高橋。
俺は高橋を呪いながら。
かける言葉を失ったまま、彩子さんの嗚咽を黙って聞いていた。
「私が、バカだって……わかってる。騙された私が。
……でもね、でもね……なにも…こうやって逃げなくてもいいじゃない……うぁぁぁん!!」
大声を上げて泣く彩子さん。
顔はさっきよりぐしゃぐしゃだ。
…おいおい、また鼻水たれてるよ。
もう、どーすりゃいいの、これ。
「……よしよーし、彩子さんは悪くない、悪くなーい」
半ば混乱した俺は、子供をあやすように頭をなでた。
泣いてる女にどうしたらいいかなんて、この冴えない俺が知ってるわけがない。
とりあえず、彼女の泣く姿が子供みたいだったから。
俺は優しく彼女の頭を撫で続けた。
「うぅぅ……」
……よし、効果があったみたいだ。
彩子さんは、ギュッと目を瞑ると、嗚咽を止めた。
俺の手に身を委ねるようにしながら、ただ、静かにポロポロと涙を零していた。
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