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「──ごめんね、夜遅くに迷惑かけて。私、帰る…」
しばらく黙って頭を撫でられていた彩子さんは、不意にそう言って立ち上がった。
彩子さんが立ち上がったついでに時計を見ると、もう日付が変わっていた。
「帰るって…近いんですか?家。遅いんで、送っていきますよ」
一応、男としてはね。
こんな夜中に、女性を一人で歩かせちゃいかんだろ。
「…ううん、いいよ。けっこう遠いし、タクシー乗って帰る。これ以上迷惑かけられないよ」
彩子さんは泣きはらした顔に笑顔を浮かべて、俺の申し出を断った。
しっかりした大人の女の顔で。
大人なんだか、子供なんだかわからないな。この人。
「じゃあ、気をつけて…」
「うん、本当ごめんね」
軽く手を振ると、彩子さんは部屋を出ていった。
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