16768人が本棚に入れています
本棚に追加
歩くごとに心臓が高鳴る。
地面が。大地が。空気が僕をとらえて離さない。
一歩。今日も殴られる。
二歩。トイレの便器を舐めさせられる。
三歩。イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ……
「よっ。龍也」
ドクン。後ろから矢がささる。
重い首。鉛のついた首輪をつけられたようだ。
錆び付いたように軋む首を後ろに向ける。
七崎隆也(ナナサキタカヤ)…
僕らのB組のクラスメート。
「おはよう」
僕は目を合わせずにいう。心臓が痛む。
「おう、お前よく学校これるよな。俺なら自殺するね」
笑いながら言う。殺意の苦虫を心の中で噛み潰す。
「う…うん」
「お前、もっとハキハキしゃべれって。そんなんだからイジメられんだよ」
急に話し方が変わる。
僕は唇を硬くする。今、ここで反論しても学校でシメられるだけ…
「いい加減にしろよ。まあ、いいや…今日も学校楽しもうな」
稲妻のように体に、心に刺さる皮肉。
拳を握る。こういう奴なんだ。
七崎隆也…クラスのお調子者。僕の憎むべき人間の一人。
走りゆく七崎の背中を睨む。
殺意というナイフを心に隠して。
最初のコメントを投稿しよう!