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歩くごとに心臓が高鳴る。 地面が。大地が。空気が僕をとらえて離さない。 一歩。今日も殴られる。 二歩。トイレの便器を舐めさせられる。 三歩。イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ…… 「よっ。龍也」 ドクン。後ろから矢がささる。 重い首。鉛のついた首輪をつけられたようだ。 錆び付いたように軋む首を後ろに向ける。 七崎隆也(ナナサキタカヤ)… 僕らのB組のクラスメート。 「おはよう」 僕は目を合わせずにいう。心臓が痛む。 「おう、お前よく学校これるよな。俺なら自殺するね」 笑いながら言う。殺意の苦虫を心の中で噛み潰す。 「う…うん」 「お前、もっとハキハキしゃべれって。そんなんだからイジメられんだよ」 急に話し方が変わる。 僕は唇を硬くする。今、ここで反論しても学校でシメられるだけ… 「いい加減にしろよ。まあ、いいや…今日も学校楽しもうな」 稲妻のように体に、心に刺さる皮肉。 拳を握る。こういう奴なんだ。 七崎隆也…クラスのお調子者。僕の憎むべき人間の一人。 走りゆく七崎の背中を睨む。 殺意というナイフを心に隠して。
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