罪を背負う者

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  今日も、殺した。 逃げ惑って、助けを乞う 『誰か』をこの世界から消した。 そこに、感情はなかった。 ただ、人を殺した後は言い様のない感覚に襲われる。 自分が満たされているのか、それとも、何かを失ってしまった虚無感に浸っているのか。 どちらともいえない。 いくら人を殺しても、俺の心にできた『穴』は埋まらない。 哀しくはなかった。 そういう感情すら、なかった。 いや、もともとはあったのかもしれない。 血に染まる日々の中で、失ったものの一つなのだろうか。 *** 何人もの冷たくなった亡骸の横に立ち、俺は刀についた返り血をじっと見つめていた。 いつもなら早々に場を去るのに、何故か今日はそうしなかった。 それはきっとただの気紛れで、そこに考えなんてなくて。 だから、知らなかった。 この時の“気まぐれ”が、俺の人生を変えることになるなんて。
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