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「えー、…お前が人間でない事は解った。転生使だかってのも信じよう」
俺は茶を啜りながら内心信じられない思いを頭で廻らせていた。
「あれ?やけにあっさり信じるんだね?あれだけ馬鹿にしてたのに」
「俺は目に見えて触れたものは信じるんだよ。お前は俺の目の前で飛んで、羽も本物だった。信じるのは当然だ」
さらに俺は続けた。
「ただ、やっぱりまだ状況に頭がついてけてないんだ、とりあえず詳しく聞かせてくれ」
「そうだった、そうだった。私の使命まだ言ってなかったね。私がゼウス様から出された使命は…」
真っ直ぐ俺を見つめる眼差し、相変わらず無表情は変わらない。
「私の使命は、あなたの夢を叶える事」
「はぁ?俺の夢を叶える?」
「そう。あなたが今現在持っている夢を叶える事、期限はあなたの夢をあなたの口から聞いてからきっかり365日。」
「待て待て待て!なんで俺なんだ?」
「そんなの私に聞かないでよ、ゼウス様が決めた事なんだから」
おい!神よ、俺はあんたに何かしたのか?
「…で?期限内に使命を果たせないとお前はどうなるんだ?」
「…消えるの」
「…消え?」
消える?何を言ってんだ?
「存在がなくなるの、もちろん生まれ変わる事も天使に戻る事も、悪魔になる事さえできない、文字通り消滅するの」
おいおいおい!まじかよ?存在の消滅?
それは ちとヤバくないですかい?
「だから…」
女はテーブルに乗り上げグッと顔を近づけてきた。
「頑張って夢を叶えようね」
ニコッと笑う。
か…可愛いっ!
じゃなくてぇぇ!
それって俺、責任重大じゃないか?俺の夢が叶わなかったら、こいつは消える?
「もしかして、超重大任務?」
俺は苦笑いで問う。
「うん!」
そんな…。満面の笑みでかえすなよ…。
「さぁ、あなたの夢を言って。契約しなきゃ」
「契約?」
「そう、契約。あなたの夢を私が聞いて、それを叶えるために必要最低限の神力をゼウス様から頂くの。その神力であなたが夢を叶える手助けをするってわけ」
ボーン、ボーン…
壁にかけられた時計が零時を告げた。
「解ったよ…俺の夢は…」
さらば、俺の平和な日常。
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