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「っあぁ~、疲れた」
沙弥の服が入った袋をベンチに置き、自らもドカッと座り込む。
「朝から出たのにもう夕方かよ…」
太陽は西に傾き、空はオレンジ色に染まっていた。
「お疲れ様。ハイ、これ」
笑顔で鯛焼きを俺の前に突き出す沙弥。
「おっ、ありがと」
たまには気が利くじゃないか。
「いいよ~、ハルのお金だしね」
前言撤回!
自宅から少し離れた場所にある、ここ泉公園はよく行く神成公園から結構近くにある小さな公園だ。
その公園で休憩中な俺達。
「ねぇ、ハル~。お腹空いたよぉ」
「今鯛焼き食ったばっかじゃねぇか」
ていうか転生使とかでもやっぱり腹は空くのか。今朝も爆睡してたし…、俺ら人間とあんまり変わらないんだな。
「早く帰って晩御飯食べようよぉ」
噛み合ってねぇなぁ、会話。
「わかったわかった、じゃ帰ろうか」
どーせ作るのは俺だろ?
「夕日綺麗だったね、ハル」
帰り道、沙弥が突然言い出した。
「そうだな…」
「また見に来ようね?」
「あぁ、そうしよう」
夕日ごときに何をって思ったけど、無邪気な沙弥はまるで子供の様で可愛かった。
契約をしたあの瞬間から、沙弥は変わった。無表情な沙弥は消えて、女の子になっていた。
見た目は丸っきり人間なのに、こいつは転生使なんだよな…。
生まれ変わるために俺の願いを…か。
まだなんにもこいつの事わかんないけど、頑張ってやるか。
あと一年…。
長いようで実際結構短いんだよな…。なんとかしてやるよ。
光りはじめた星に、心の中で誓った。
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