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「てんせい…し?」
初めて耳にする単語に思わず聞き返した。
「そう、転生使」
はっきりと言い切り彼女は続けた。
「少し長くなるけど我慢して聞いてね。大事なことだから…」
相変わらずの無表情で語り始めた。
「転生使ってのはね、人間でもなく、天使でもない、もちろん悪魔でもないの。私達転生使の存在は儚く脆いものなの。
この世に生を受けたものが死ぬと、黄泉という天界と人間界の狭間に行くの。そして生前の行為により、最高神ゼウス様に裁かれ、悪魔、もしくは天使になるの。ここまではいいかな?」
?
は?
天使?悪魔?神?
何を言っちゃってるのかな?この人は。
俺の頭にはクエスチョンマークがたくさん浮かんでいた。
そんな事お構いなしに彼女は話続けた。
「ゼウス様は、毎年一度天界にいる全ての天使から50人選んで転生使に変えるのね。もちろん悪魔は選ばれない。犯した罪が重すぎるからね。
そして転生使に使命を与え、人間に送るの。
その使命を果たせた転生使は晴れて転生され、再びこの地上に生を受けるってわけ」
まずい。俺の頭はオーバーヒート寸前だ。
よし、まとめよう。
つまりこいつは人間ではなくて過去に死んだ。そんで転生使だかってのに選ばれて、転生するため使命を果たしに地上に来た…と。
…
………
……………
こいつぁヤバい。
相当の数のネジが頭から外れてしまったらしい…。
関わらない方が身のためだ。
そう思い俺はこの危ない女を追い出す決意をした。
「あぁ、ハイハイ。解った解った。じゃあね、俺もう寝るから帰ってくれる?」
俺は彼女を限界に促した。
「あっ!信じてないでしょ?私の事危ない奴だって思ってるでしょ?」
あぁ、全くその通りだよ。
「当たり前だ!そんな非現実的な事信じる奴の方がおかしいだろ?俺はこの目で見て触った物しか信じない主義なんでな」
俺がそう言い放つと彼女は ふーん…と呟きながら玄関とは反対方向に向かい歩き、ベランダへの扉をガラッと窓開けた。
「おいっ!どこ行くんだ?そっちはベランダだっ……」
そう言い終わる前に銀髪はベランダの柵に足をかけ、よっ…と言いながら足場の悪い柵の上に立ち上がった。
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