第1章 ―舞い降りた雪―

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「てんせい…し?」 初めて耳にする単語に思わず聞き返した。 「そう、転生使」 はっきりと言い切り彼女は続けた。 「少し長くなるけど我慢して聞いてね。大事なことだから…」 相変わらずの無表情で語り始めた。 「転生使ってのはね、人間でもなく、天使でもない、もちろん悪魔でもないの。私達転生使の存在は儚く脆いものなの。 この世に生を受けたものが死ぬと、黄泉という天界と人間界の狭間に行くの。そして生前の行為により、最高神ゼウス様に裁かれ、悪魔、もしくは天使になるの。ここまではいいかな?」 ? は? 天使?悪魔?神? 何を言っちゃってるのかな?この人は。 俺の頭にはクエスチョンマークがたくさん浮かんでいた。 そんな事お構いなしに彼女は話続けた。 「ゼウス様は、毎年一度天界にいる全ての天使から50人選んで転生使に変えるのね。もちろん悪魔は選ばれない。犯した罪が重すぎるからね。 そして転生使に使命を与え、人間に送るの。 その使命を果たせた転生使は晴れて転生され、再びこの地上に生を受けるってわけ」 まずい。俺の頭はオーバーヒート寸前だ。 よし、まとめよう。 つまりこいつは人間ではなくて過去に死んだ。そんで転生使だかってのに選ばれて、転生するため使命を果たしに地上に来た…と。 … ……… …………… こいつぁヤバい。 相当の数のネジが頭から外れてしまったらしい…。 関わらない方が身のためだ。 そう思い俺はこの危ない女を追い出す決意をした。 「あぁ、ハイハイ。解った解った。じゃあね、俺もう寝るから帰ってくれる?」 俺は彼女を限界に促した。 「あっ!信じてないでしょ?私の事危ない奴だって思ってるでしょ?」 あぁ、全くその通りだよ。 「当たり前だ!そんな非現実的な事信じる奴の方がおかしいだろ?俺はこの目で見て触った物しか信じない主義なんでな」 俺がそう言い放つと彼女は ふーん…と呟きながら玄関とは反対方向に向かい歩き、ベランダへの扉をガラッと窓開けた。 「おいっ!どこ行くんだ?そっちはベランダだっ……」 そう言い終わる前に銀髪はベランダの柵に足をかけ、よっ…と言いながら足場の悪い柵の上に立ち上がった。
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