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四番隊にだけある、患者用のベッドに横たわるのは、紛れもない日番谷の姿
呼吸器で命を繋ぎ止められ、機械音が部屋に響く
そんな異世界に迷い込んでしまったのだと、気が動転している市丸は入るがままに傍の椅子に座って愕然と横たわる“人形”を眺める
“嘘やろ…な、ァ…日番谷はん…”
その一言が口から出れば現実世界に引き戻された。
震える手を伸ばし、頭に触れて何時ものように頭を撫でる
だが、何時もなら心地好さそうに目を細めるか罵声を浴びせられるのに…
何にも無い。
だけれども、撫でる手を止められずに居て。
そして滅多に見せない、いや、見せた亊もないが開かれた紅蓮の瞳から零れ落ちた涙。
雫は、閉じられた瞼に落ちた。
その刹那、ガバッと相手に軽く覆い被さるような形になり涙を静かに堪えていた
何で、彼が?
頭にあるのは其だけ。
最早、何も考えられないのだ、無二の恋人が今にも遠くに旅立ってしまいそうで。
彼には未だやるべき亊がたくさんある
それに未だ彼の見ていない未来を共に見たかったのに
追い詰めれば追い詰める程涙が止まらないのである
然し、無情にも部屋に響き渡る機械音は現実を突き付けていた
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