彷徨い果ての氷心

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―‥…主? 唐突にも当てられた微かな霊圧。然し、其れは棘が在る様な禍々しい物では無く、やんわりとコントロールの効いた物だった と、同時に思わず、そう、反射的に振り替えって、己の主が座しているであろう隊席の方に振り向きながら、やや疑問系だが何かと言う意思を含め名を呼んでみた 主で在る日番谷は、此方を向いた己の斬魄刀を見るなり、座していたであろう席から腰を上げ、 彼に歩み寄り、窓際のもう片側の端に向かい立ち止まり、氷輪丸を見上げながら一旦間を置きつつ口を開き言葉を紡ぐのだ。 ―‥…俺に気を遣う亊は無い。 寧ろ、他の奴等同様に自由にしてくれた方が俺も安心するんだが。 無理に、とは‥云わねぇが‥ 此れまた唐突に、且つ、今迄の、己の気遣いの辛さや微妙な距離感に気付き、 自由にしてくれ等と言われてしまった彼は今まで見せた亊も無いであろう抜けた表情を浮かべるのであった。 其れは、今まで張り巡らしていた糸が気持ちの良い程に音を立てて断ち切れた瞬間でもあったのだろう、 ある程度の間を経てやや心苦しくも苦笑いを浮かべては“主がそう云うなら、”と言葉を返したのである。 ,
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