第 肆 章

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(あいつを巻き込んではだめだ…。) 稔麿は先程まで居た部屋の隣の部屋に入った。 俺は松蔭先生の為に、命を懸けてでも倒幕しないといけないんだ。 その為に、沢山の人間を殺め(アヤメ)てきたんだ。 邪魔する奴は仲間でも斬ってきた。 俺の手は血で汚れ(ケガレ)ている。 汚れをしらないあいつには触れる事はできないんだ。 それに…もし俺達と関わっている事を新撰組の奴らに知られたら? あいつは俺達の事をばらす様な事はしないだろう。 しかしあいつは罪人扱い。 拷問を受け、屈辱も皆受け止めて散っていく。 あいつにはそんな事させたくない。 今まで人にこんな想いを抱いた事はなかった。 でもあいつだけは違うんだ。 たった二回しか会っていないけど、あいつといると穏やかな、暖かい気持ちになれる。 安心するんだ。 何も知らないあいつの事を…俺は好きなのか? でも、俺と居ると不幸になる。 あいつを…巻き込んではいけないんだ…。 だから俺は怒鳴るように言葉を発し、拒絶しているような態度をとった。 そしたらあいつの顔…。 涙を溜めて哀しそうに俺を見る。 悲しませたくないのに。 傷つけたくないのに。 あの悲痛の表情が眼に焼き付いて離れない。 俺は…どうしたらいい?                
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