第 弐 章

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          「綺麗…。」         稔麿が月を眺めている頃、同じ様に月を眺めている少女がいた。     その少女がいるのは偶然にも天乃屋の中庭だった。 縁側に腰をかけ、隣には黒猫が寝ている。           大人びた顔つきで肌が雪の様に白く、頬はほんのりと朱く染めている。 長く結っていない髪は、この時代には珍しい茶色に近い色をしている。         正に“美しい”少女だった。           「見て、翠(スイ)。  凄く綺麗な月よ?」       少女は隣で丸くなって寝ている黒猫に話しかける。       その声に反応した翠と呼ばれた猫は眼を開き、少女を見上げた。     翠の眼は、深く、澄んだ翠色(ミドリイロ)という珍しい色をしていた。            
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