第 肆 章

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                最後まで話し終わった瑠璃は、高杉の方をチラッと見る。     その視線に気づいた高杉は、瑠璃の頭をそっと優しく撫でる。         「稔麿を助けてくれて、ありがとな。」       そう言い、優しく微笑む。           瑠璃は稔麿に拒絶された哀しみと不安が、少しずつ和らいでいくのを感じた。         そして瑠璃はおもむろにに口を開いた。         「あの、貴方達は…罪人なのですか?」         瑠璃の直球の問いに驚くが、それは苦笑いと変わっていった。         「あぁ…俺達は長州の人間なんだ。」     「長州…。」         瑠璃は長州という言葉を聞き、佐幕派の新撰組と倒幕派の長州が対立している事を思い出した。     そしてその結果、長州の人々は京を追い出された事も…。             瑠璃には勤皇、攘夷、佐幕派、倒幕派…何が善で、何が悪か。 そんな難しい事は一切分からなかった。           しかし新撰組との関わりがある為、彼らが京の為に必死に闘っている事を知っていた。       しかしその対立している長州の人々…高杉や稔麿の事を悪い人とは思えなかった。             そしてそんな矛盾とも言える思いが、瑠璃の頭の中をぐちゃぐちゃにし、いつの間にか頬には涙がつたっていた。       その涙は止まる事なく、瑠璃の瞳からぽろぽろと溢れる。         「どーしたんだよ?!  泣くなって!」       高杉は急に泣き出す瑠璃に驚き、どうしたらいいか分からず、あたふたしてしまった。         そんな時、障子が静かに開かれ、部屋の中に稔麿が入ってきた。     そして静かに瑠璃と高杉の近くに腰掛けた。                
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