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「どこ行くと?」
「蛍が俺のベッド使ってるから、違う部屋で寝るんだよ。」
ちょっと無愛想になってしまったが、この場合仕方ないだろう。
「佐藤、ちょっと来て。」
「何だ?」
「手、出して。」
「こうか?」
言われるままに右手を差し出す。
「逃がさん。」
そして、ガッシと手を握られた。
「何してんの?」
「手ぇ握っとると…」
それは、見れば分かりますとも。
「何でだ?」
「佐藤が…どこも行かんように…。」
その時、蛍の声色が少しだけ変わった気がした。
カッチカッチと、部屋においてある時計の針が時を刻む音だけが部屋に響く。
「………。」
「………。」
「ふぅ、分かったよ。
俺はどこにも行かない」
軽くため息をついて、できるだけ優しく微笑む。
普段、こんな表情をする事が少ないから上手く笑えてるか心配だ。
「……うん。」
蛍は小さく頷くと、握っている手に、キュっと力を入れてきた。
「襲われても文句言うなよ…」
「大丈夫…佐藤はそがん事しきらんけん…。」
よく分かってらっしゃるww
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