90584人が本棚に入れています
本棚に追加
ピンポーン―
玄関のほうから来客を知らせるチャイムが鳴り響く。
俺は、その音で目を覚ました。外を見ると、もう夕方に近いようで少し暗くなり始めていた。
「あぁ、誰か来たみたいだな…。」
まだ覚醒しきってない脳みそでぼんやりと考える、その時ふと肩の辺りに違和感を感じて、そちらの方に目を向けた。
「………近い。」
俺の隣には、幸せそうに眠る蛍がいた。
肩にあった違和感は蛍が頭を乗せていたからだった。
……よき匂いよのぉ
蛍は自分がかぶっていた毛布を引きずりおろして、俺と一緒に包まるようにして寝ている。
…柔らけぇ
ピンポーン―
玄関で何度目かのチャイムが鳴り響く。
「……。」
俺は、チラリと隣で眠る蛍に視線を向ける。
なんともまぁ、気持ち良さそうに眠ってらっしゃる…
「……ふぁあ、暖かいな…。」
大きく欠伸をして、毛布をかけ直す。
「…もう一回寝よ…。」
俺はその時、寝る前に蛍と繋いでいた手が未だにそのままの事に気付き小さく笑った。
「おやすみ、蛍…」
空いてる方の手で蛍の頭を軽く撫でてやる。
―いつの間にか、チャイムは鳴り止んでいて、その部屋には時を刻む時計の針の音と、俺のいびき、それと、蛍が時折呟く、
「…よしはる…」
って言う寝言だけになっていた。
うん、俺のいびきって確実に雰囲気ぶち壊してるよね…
最初のコメントを投稿しよう!