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「トイレ行こ……」
ある休み時間、尿意を催した俺はトイレに行くべく廊下に出た。
すると、胸の辺りに軽い衝撃を感じたので視線を下げてみる。
俺の視線の先にはアイツがいた。
俺に比べると小さいソイツは俺の胸に鼻をぶつけたらしく、涙目になりながら赤くなった鼻を手で押さえて上目遣いにこちらを見てきた。
睨むわけでもなく、責めるわけでもなく、基本的に無表情なままで。
「すまん。大丈夫か?」
コクリと頷くソイツ。
コイツは……大丈夫じゃなくても大丈夫って言いそうだな。
そう思った俺はもう一度だけ聞いてみる。
「一応保健室に行くか?鼻、赤くなってるぞ?」
「…………」
僅かに目線が泳ぐのが見えた。
動揺してるのかね?
「なぁ、何か言ってくれないと心配になるだろ?」
さらに左右にせわしなく動く視線。
それに加えて心なしか顔全体も赤く見える。
照れ……てる訳じゃなさそうだな。
よほど痛かったんだろう。
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