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二人の出会いは、唐突だった。
「きゃっ」
「わっ」
住宅街の曲がり角。
ぶつかった反動で、どしーんと音を立てて尻餅をついた花子は、目尻に涙を浮かべながらその相手を確認する。
「す、すみません!大丈夫ですか?」
「いいい、いえ、僕の方が悪いんです。よそ見してて、すみません」
向こうも同じように地べたに尻をついて、痛みに顔を歪めている。
ぼさぼさの無造作に伸ばされた髪の間から、その表情はわずかに伺えるくらいだ。
それにしても、前髪長すぎる。
「その髪で、前、見えますか?」
「えっ!…は、はい、一応。ほ本当すみませんでした」
「あ、責めてるわけじゃないんですよ?ただ、気になったもんで」
花子はぶつかった際に手放したかばんを持ち直して立ち上がると、スカートをパタパタと叩きながら首を傾げた。
「お急ぎじゃ無いんですか?」
「えっ?」
「いや、あの、走ってたから…」
「だっ大丈夫です。何となく走ってただけですよ」
「そうですか」
ひょろっとしていて背があるように見える倒れたままの男の人。
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