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えっ。
「……教えてくれるの?」
「もちろん。僕だって悪いと思ってるんです。だからそのお詫びです」
そう言うと、机と椅子を更に寄せて、武蔵は花子の持っていたシャーペンを奪い、プリントに顔を寄せた。
思ってもみない救世主の登場だ。だが、
(ちちち、近いよ!!)
今度は別の意味で抗議をしたい。
触れ合いそうな腕を、さりげなく引いて、花子は左肘を机に付いた。
「全部解いてくれんの?」
「まさか。それでは花ちゃんのためにならないじゃないですか」
「ですよね~」
「やり方を教えますから、問題は自分で解いてください」
「はい」
やっぱりお母さんみたい。
そんな事を思いながら、ちらりと見上げた武蔵の顔。
伏せられた睫毛が思いの外長いのに驚く。
肌も綺麗だし、目も大きいし、笑窪もかわいい。
もっと髪を短くしたら、きっとまともにモテるんではないだろうか。
――オタクだとバレさえしなければ。
「何かついてます?」
「わぁっ!い、いや、何も…」
「そうですか?…好きな人に見つめられると、緊張してしまいます」
「ゔ、おまっ…また言ったな」
「やめるなんて言ってないじゃないですか。好きですよ」
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