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「……でも、花ちゃんの気持ちがないのに、されても嬉しくないですね」
お。
「そう!そうだよ!意味ない意味ない!他のにしよう?」
やった!この状況から抜け出せる!!と、必死になる花子に、少し悩むようなそぶりを見せた武蔵は、それから顔を上げ、不敵な笑みを零した。
笑窪が邪魔して、少し可愛いらしいが。
「じゃあ、僕からさせてもらっていいですか…?」
―――――はぁ?
「ね?」
「う、あ、いや、その…」
「何でもいいんですよね?な・ん・で・も」
「くぅ~っ」
悔しい、負けた!
嘘を付くのは大嫌いだ。
そして女に二言はない。
本当に不本意だが、花子は渋々と、首を縦に振った。
「花ちゃん…」
名を呼ぶ武蔵を見上げると、ちょっぴり嬉しそうにしているではないか。
何故だかその笑みを見ていると、ホッとして気がほぐれる。
「好きですよ」
耳にかかる吐息に、思わず目を閉じ顔を赤くする。
さっさとしてくれ、と思いながら、じっとその時を待つ。
優しく温かい武蔵の手により顔を引き寄せられ、次の瞬間、右の頬に震える唇が、触れた――。
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