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「…ふぅっ」
ドキドキしすぎて死んじゃう!
思わず零れた声に、慌てて口を押さえると、唇を離した武蔵がキョトンとした顔で花子を解放する。
「おしまい」
「……あ」
薄れていく温もりを、名残惜しく思うなんて変だ。
ああ、おかしくなってしまったのか。
混乱の涙に濡れた瞳で、不安に武蔵を見上げると、花子をじっと見つめていた武蔵はハッとして目を見張った。
「ごめん!…そんなに嫌だったなんて…本当ごめん!」
「えっ…?」
違うよ。
「もうしないよ、二度とこんなことしない。だから、泣かないで――」
違う、そうじゃない。
一瞬、武蔵がオタクだなんていうこと、忘れてた。
ただ苦しげに歪んだ顔が、どうしようもなく腹立たしくて、「あたしの前ではいつも笑っててよ」って、そう思ったのだ。
「馬鹿野郎!い、嫌だったわけないだろ!こっちはこんなに、ドキドキしてんだ。そんな、悲しい顔…するなよ…」
「えっ?花ちゃん…?」
驚いたような武蔵の顔。
…………んん?お?あ!のぉ!
「わ、わぁ!あたし、何言って……!!」
しまった!!
混乱して、ぐるぐると目を回す花子は、何てことを言ってるんだと、心の中で自分自身を叱責する。
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