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相手はオタクだぞ?オタクなんだぞ?
ややあって、指先に感じた控えめの温かさ。
気付いて視線を落とせば、武蔵の指が絡んでいるではないか。
「む、武蔵…?」
手から伝わる温もり、窓から差し込む夕日の光、隣の武蔵の微笑みは今まで見たどんな表情より、胸に焼き付いた。
「ごめっ…嬉しくて。泣き…」
「…人には泣くなって言ったくせに。やっぱヘタレじゃない」
「違う!!」
「そこは否定するのね」
「うぅ…」
くすんと鼻をすすって、開いてる方の手で涙を拭う。
その後、握っていた手を離して席を立つ武蔵。
「…今日はちょっと嬉しすぎるので、帰ります」
「言っとくがさっきのに深い意味はないからな!ほんの出来心だ、うん。そうだ」
「そんなに嫌ですか、オタク…」
「ああ、嫌だ。だから、何もなかったってことで!」
「……花ちゃんが、それを望むなら」
「だからどうしてそんな悲しい顔する…」
「好きだからに決まってるじゃないですか!ばかぁっ!」
「!」
駆け出した武蔵はあっという間に教室の外へ。
それを見送り、しまったという顔をした花子は、机に寝そべり頭を抱えた。
はぁ。
「あたし、何してんだろなぁ」
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