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事の発端は、真実からの呼び出しだった。
「真実ー?なんか用…うわぁ!武蔵!!」
「わぁっ花ちゃん!」
待ち合わせ場所の生物室。
ここは授業で使われることも稀で、人もほとんど立ち寄らない、サボるには絶好の場所なのだ。
しかし今は放課後。
サボっているわけでも、何でもないから、安心してほしい。
――開けた扉の先には、何故かたたずむ武蔵が一人。
花子は目を丸くした。
「何でお前が…」
「ぼ僕は別の人に呼ばれて…」
ガラガラ、ピシャン。
ガチャリ。
『あ』
突然音を起てて勝手に閉まった扉。耳に届いた鍵のかかる音。
二人は顔を青くして、同時に声をあげる。
扉の向こうから、声がする。
「先生ー、早く行きましょうよ」
「はいはい、鍵全部かけ終わったらね」
どうやら鍵をかけたのは生物の先生のようだ。
隣にいる生徒は、真実のような…いや、声からして確実に真実だ。
確認せずに鍵をしめるなんて有り得ない。
閉めたのは真実だ、完全にハメられたのだと、花子はボー然として扉を眺める。
遠のいていく足音に、血の気が引いていくばかりで、何もできなかった。
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