封鎖空間

2/15
62人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
 事の発端は、真実からの呼び出しだった。 「真実ー?なんか用…うわぁ!武蔵!!」 「わぁっ花ちゃん!」  待ち合わせ場所の生物室。  ここは授業で使われることも稀で、人もほとんど立ち寄らない、サボるには絶好の場所なのだ。  しかし今は放課後。  サボっているわけでも、何でもないから、安心してほしい。  ――開けた扉の先には、何故かたたずむ武蔵が一人。  花子は目を丸くした。 「何でお前が…」 「ぼ僕は別の人に呼ばれて…」  ガラガラ、ピシャン。  ガチャリ。 『あ』  突然音を起てて勝手に閉まった扉。耳に届いた鍵のかかる音。  二人は顔を青くして、同時に声をあげる。  扉の向こうから、声がする。 「先生ー、早く行きましょうよ」 「はいはい、鍵全部かけ終わったらね」  どうやら鍵をかけたのは生物の先生のようだ。  隣にいる生徒は、真実のような…いや、声からして確実に真実だ。  確認せずに鍵をしめるなんて有り得ない。  閉めたのは真実だ、完全にハメられたのだと、花子はボー然として扉を眺める。  遠のいていく足音に、血の気が引いていくばかりで、何もできなかった。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!