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「なっ…なっ……」
「閉じ込められてしまいましたね?」
「わっわぁ!寄るな寄るな!」
すっと横に現れた武蔵に、花子はビクリと飛び上がって後ずさる。と同時に背中に壁の冷たさを感じた。
そんな花子を見て、武蔵は片手を振りながら、気の抜けた笑みを零す。
「大丈夫ですよ、何もしません」
「お、おぅ」
教室より一回り大きいくらいの広さの部屋で、ホルマリン漬けの動物やら剥製やらが、辺りを囲むのみ。
たった二人きり。
昨日の今日でこの状況。
一体どんな顔をすればいいのかわからない。
真実は一体何を考えているんだ?
今回ばかりは大切な友人でも恨めしく思う。
「…でも、明日の朝まで開きませんよ。きっと。もうここには来ないだろうし」
「……あ゙あ゙!そうだ、そうだよ!」
鍵は外からしか開けられない。
そしてその鍵も担当の教員が持ち帰るのだ。
朝まで決して、開くことはない扉。
「今日は一晩、ここで過ごさなくては」
「え、な、何それ。本気で言ってんの?」
「もうひとつ、窓から飛び降りるという選択肢がありますが、オススメしません」
「三階なんだから選択肢ですらならないよ!」
「知ってます」
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