62人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんか、お腹すきますね」
「まだ大丈夫」
「…今日はお風呂入れませんよ」
「臭いってこと?失礼だな」
「ふふ、違いますよ。そうだ…今晩は宿題教えてあげましょうか?」
「え?マジ?やったぁ!!」
調子のいい花子は同じようにして壁にもたれ掛かかった武蔵に、満面の笑みを浮かべる。
「さ、ちゃんとお家に連絡してください」
「はいはーい」
これはラッキーと、早速メールを打ち始めた花子は、いつの間にか手の震えが止まっていたことに気が付いた。
そして、はっとする。もしかして、わざと話をそらしてくれたのか。
ちらりと見上げた武蔵は、何事もなかったような顔をして、窓から外を眺めている。
「…武蔵って…」
「はい?」
「……いや、何でもない」
何気にいつも優しいよな。
携帯をポケットにしまい込み、その場に腰を下ろした花子。
それを見た武蔵が、ぎょっとして花子に指をさす。
「は、花ちゃん…!?」
「何よ」
「ううう後ろ!ゴキ…ゴキっ…」
「ゴキ?」
ブンブンと首を縦に振る武蔵に、花子は怪訝な表情を浮かべて振り返る。
最初のコメントを投稿しよう!