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そして、やつの姿を認めた花子は、ぞわりと鳥肌をたてると同時に、盛大な悲鳴をあげた。
「ゴ、ゴ、ゴ、ゴキブリーっ!!ぎゃああ!」
黒光りする不気味なゴキブリがガサガサと動きだし、危うく花子のスカートの裾に乗りそうなところで、なんとか立ち上がる。
もう平静なんて保っていられる状態ではなかった。
飛び付くようにして武蔵の首をぐぐっと…。
「うげっ」
「むーさーしーっ!どーにかしろーー!!」
カエルが潰されたような声を上げる武蔵には構わず、花子はこちらに向かってくるゴキブリから身を守るように武蔵を盾にする。
「は、花ちゃ…苦しっ…」
「いーから捕まえろーーっ!」
一方の武蔵も生きるか死ぬかの瀬戸際だ。
海老ぞりの体勢から何とかゴキブリの行方を探す。
「ちょっとだけ、手、離して…」
「キャーキャー」
花子はそれどころではない。
「うぅ…」
「はーやーくーー」
「ふ、踏むよ?踏むからね?潰れるからね?」
「いい!いいよ!全然気にしないから!!」
一応了承をもらい、動きを止めているゴキを見据えた武蔵。
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